失礼な話

やっぱ殺風景過ぎ?
 
 私の部屋では、地域のテレビ電波の受信状況が悪いのか、地上波のテレビ放送をケーブルテレビ経由で見る仕様になっています。
 先日、そのケーブルテレビの設備の点検がありました。点検は5分ほどで終わって、特に問題は無かったのですが、ちょっと殺風景な私の部屋を見た点検の人に「引っ越して来られたばかりですか?」と聞かれてしまいました。
 温厚な私は「キィーッ!3年も住んでるのに失礼ざます!」なんて思ったりはしません。でも、おかげで3年前の、本当に失礼と言ってもいいかもしれない経験を思い出しました。
 

 3年前、今の部屋に引っ越してきたとき、私は、一週間の間隔を置いて、2回に分けて荷物を運ぶことにしました。その前の引越しのときから空けていない数十個の段ボール箱が、部屋の大半を占めていたので、まずはそれらを運び出して、ワークスペースを確保してから、残りの荷造りをすることにしたのです。家具類はほとんど持っていないので、2回に分ければ赤帽が使えて安く済ませられるかも、という目論見もありました。

 で、1回目の引越しの日、前夜からすっかり奴隷モードになって、三十数個の段ボール箱を、一人で4階から1階まで階段で運び降ろした私は(計算すると百階建てくらいのビルを荷物を持って降りるくらいの仕事量になるんですよ)、我が人生のベスト5に入る達成感を感じながら、赤帽の車の助手席に乗り込みました。

 引越し先の集合住宅に着くと、新築で引越しが集中しているのでしょう、引越し車両を誘導するおじさんがいました。おじさんは、私たちの車に近づいて「なんですか〜?」と聞いてきました。赤帽といっても、あの赤い車ではなくて、普通のタウンエース とかだったので、工事関係の車だと思ったのかもしれません。赤帽のお兄さんが「引越しで〜す」と答えると、おじさんは車の中の荷物を覗き込んで、なんと「これだけ?」と言ったのです。

 ねえねえ、それはちょっと失礼過ぎでしょう!人の良い赤帽のお兄さんは「あと半分あるんです」とか言ってフォローしてくれましたが、私が名古屋の花嫁だったら、その場で舌を噛み切っていたでしょう。引越し車両の誘導係という立場なのに、入居者の荷物に「これだけ?」って…。少ない荷物だと思うのは当然かもしれませんが、口に出して言うなんて…。

 まあでも温厚な私は怒ったりしませんでした。ちょっと面白かったし。

 私も常々少年の心を失いたくないと思っていますが、大人の分別も大切だよなと実感させられた出来事でした。

   

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